日本語の契約書でもあるのですが、契約当事者でない者の義務を定めた英文契約書を見かけることが、たまにあります。
たとえば、以下のような文章があったとします。
The Purchaser or its subsidiary to which the Product is delivered shall pay the price of the Product to the Seller within 7 business days from the Delivery of the Product.
参考訳:購入者又は本商品が引き渡された購入者の子会社は、本商品の引渡しから7営業日以内に、本商品の代金を販売者に支払わなければならない。
上の文章は、商品が購入者ではなく、直接、子会社に引き渡される場合もあることから、その場合に、子会社から販売者に対して、直接、代金を支払うことを想定した文言です。
しかし、売買契約の当事者は、あくまで購入者と販売者なので、契約当事者ではない購入者の子会社に義務を課すことはできないはずです。契約上の義務を負うのは、あくまで契約書に署名した購入者であることを忘れてはいけません。
したがって、この条件は、子会社の義務としてではなく、購入者の義務として定める必要があります。そのような場合に便利なのがcause A to do という表現です。
上記の例の場合、以下のように書き直すことができます。
The Purchaser shall pay, or shall cause its subsidiary to which the Products is delivered to pay, the price of the Product to the Seller within 7 business days from the Delivery of the Product.
参考訳:購入者は、本商品の引渡しから7営業日以内に、本商品の代金を販売者に支払い、又は、本商品の引渡し先の子会社に支払わせなければならない。
このような場合に、常にcause A to do の形を使うことができる訳ではありませんが、英文契約をレビューする際には、「契約当事者でない者に、直接、義務を課す表現になっていないか?」という点は、少し、注意して見ていただければと思います。