英文契約の交渉においては、相手企業から達成困難な義務の履行を求められることがあります。
例えば、販売代理店契約において、メーカーが、販売代理店に対し、以下のような義務を設定する場合です。
Sales Representative shall sell at least 3000 units of the Products each year during the term of this Agreement.(販売代理店は、本契約の有効期間中、最低でも、年間3,000個は製品を売らなければならない。)
このメーカーの要求に対し、年間2000個程度は販売できそうだが、3000個は無理とは言わないが相当厳しいという場合、販売代理店としては、「3,000個は無理だから、2,000個に減らしてくれ」と交渉することが、まず、考えられます。
一方、3,000個という数字はそのままにしておき、「販売義務を販売努力義務に変更してくれ」と交渉することもよくあります。
後者の場合は、下記のようにmake reasonable effortsという表現を用います。
Sales Representative shall make reasonable efforts to sell at least 3,000 units of the Products each year during the term of this Agreement.(販売代理店は、本契約の有効期間中、最低でも年間3,000個は製品を販売するよう合理的な努力を尽くさなければならない。)
このように定めておけば、たとえ年間3000個を販売できなかったとしても、合理的な努力さえ尽くしていれば、債務不履行にはなりません。
ただし、当たり前のことですが、努力義務であれば、遵守しなくても問題ないというわけではありません。文字通り、努力を尽くす義務はあります。しかし、このことについて、勘違いされているのではないかと見受けられる方も時々いらっしゃいます。「努力義務規定なのだから、守れなくても問題ない」、と安易に考えているのではないかと。。。
準拠法にもよりますが、国際契約上の努力義務規定には、通常、法的拘束力が認められます。したがって、なすべき努力を欠いていた場合は、債務不履行になる場合があります。努力義務だからといって、安請け合いは禁物ですね。
ではでは、お疲れ様でした。