今日も英文契約のレビュー業務をしていると、次のような英文を見て、少し違和感を抱きました。
The Service Provider will not be responsible for the loss and damage incurred by the Client arising out of XXXX
「サービス事業者は、顧客がXXXXに関して被った損失および損害について責任を負わない」という意味だと思われますが、このような場面では、私の場合、responsible for ではなく、liable forを使っています。
responsible for も、liable forも、和訳すると「~に対して、責任がある」という意味になるので、この英文を作成した人が、responsible forを選んだことも十分理解できます。
しかし、このような場面で、responsible forを使うのには、やや不適切なのではないかと、私は、感じてしまいます。
たとえば、上司から、You are responsible for Project X. と言われたら、Project Xについては、自分に任されている、というポジティブな意味でも解釈できます。
一方、You are liable for Project Xと言われたら、「Project Xが失敗したのは、お前のせいだ!」と責められているように聞こえます。
ある程度、英語に慣れている方なら、この違いを感じてもらえると思います。
このように、損害賠償責任などの法的責任の有無が問題となる場合ではliable forを使い、一方、responsible for は、当事者の役割や責任の範囲を明確にしたい場合などに使う場合が多いと思います。
ただし、単なる当事者の義務を定めたいのであれば、shall を使えば足ります。
The Client is responsible for payment of the fee to the Service Provider.などというより、The Client shall pay the fee to the Service Provider と言った方がシンプルで分かりやすいです。
一方、responsible forを使いたい場面もあります。
例えば、WEBサービスの利用規約において、サービス上にアップロードしたデータのバックアップを取ることは、ユーザーの責任であると定める場合などでは、responsible for を使うのが適切だと思います。
下記のような感じです。
Users are responsible for keeping backups of data uploaded by the Users to the Service.
ここでは、サービス提供事業者としては、ユーザーに対して、データのバックアップを取ることを義務付けようとしているわけではありません。
仮に、ユーザーがバックアップを取らなかったからといって、サービス提供事業者が、それを理由にユーザーに対し、損害賠償請求をすることは考えられませんよね。
サービス提供事業者としては、バックアップは、ユーザーの責任であることを明確にすることによって、何らかのシステム上の不具合によって、ユーザーがアップロードしたデータが消失したとしても、それによって、ユーザーが被る損害についての責任を回避したいだけなのです。
このように相手に義務を課すつもりはないが、何らかの理由で、責任の範囲を明確にしておきたい場合には、responsible forは便利な表現だと思います。
いかがでしたか。
微妙な言葉の違いを理解して使いこなすのは、なかなか大変ですよね。私も日々勉強です。。。
ではでは、お疲れ様でした。