10年くらい前までは、英文契約書のチェック業務をしていると毎日のようにand/orという表現を見ていました。ですが、最近、この表現を見かける頻度が減ってきているように感じます。
and/orは使うべきでないという米国弁護士の意見が、徐々に浸透してきているからではないでしょうか。
なぜ、and/orを使うべきではないのかというと、その解釈について当事者間で争いが生じ得るからです。
極端な例ですが、
Company A shall provide Product A and/or Product B for Company B.
という英文を考えた場合、A社はB社に対して製品Aと製品Bの両方を供給しなければならないのか、それとも、いずれか片方だけでよいのか不明確です。
A社はいずれか一方のみ供給すればよいと考え、一方、B社は両方の供給を受けられると考えている可能性があります。
A社の立場からすると、製品Aか製品B、又は、その両方を供給すると言いたいのかもしれませんが、そうであれば、
Company A shall provide Product A or Product B or both for Company B. と言った方が明確ですね。
ただ、A or B or bothといった表現を用いなくとも、ほとんどの場合、andかorのいずれかを用いれば足ります。
例えば、以下のような文章があったとします(*よくある反社条項の英訳を簡略化したもの)
Each Party represents and warrants to the other party that it is not currently and will not in the future, an organized crime group, a member of an organized crime group, a person who left an organized crime group with in the last five years and/or a quasi-member of an organized crime group. (当事者は、相手方に対し、現在及び将来にわたり、自己が暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、及び/又は、暴力団準構成員でないことを表明し保証する。)
この条項を考えた人は、反社会的勢力とされる性質の団体又は個人のうち、そのいずれにも該当しないことを表明保証させたいと考えているはずですが、このような場合に、andを用いるべきか、あるいは、orを用いるべきか迷った結果、and/orとしてしまったのかもしれません。
しかし、このような場合は、orで問題ありません。
否定形なので、迷ってしまうのも無理はありませんが、AとBのどちらでもないと表現したいときは、not A and B ではなく、not A or Bを用います。分からない人はnot A and B(部分否定)とnot A or B (全体否定)の違いを英文法の教科書などで確認しておきましょう。
このように、安易にand/orという一見便利そうな表現に飛びつくのではなく、シチュエーション毎に、andが適切なのか、あるいは、orが適切なのか見極めて適切な方を選ぶことが大事ですね。
ではでは、お疲れ様でした。