英文契約のチェック業務を始めたばかりの頃は、なんでもかんでもshallを使って表現しようとしがちです。かくいう私もそうでした。
でも、
shall は、「~しなければならない。」という義務を
shall notは「~してはならない。」という禁止を意味しており
義務又は禁止を表現する時以外は、shallは用いるべきではありません。
日本語の契約書でも英語の契約書でも同じですが、契約書では、一つの表現に複数の意味を持たせることは避けるべきです。
また、同じ意味表すために複数の表現を用いることも避けるべきです。
意味と表現の組み合わせは、一貫していなければならないのです。
だから、shallは義務、shall not は禁止を表現したいときだけ用いましょう。
しかしながら、世の中に出回っている英文契約を見ると、不必要にshallが多用された契約書を見かけることがよくあります。
たとえば、一回限りのスポットの売買契約において、
「A社はB社から本製品を購入する」と言いたい場合、
Company A shall purchase the Products from Company B.
と書きたくなるかもしれませんが、これは間違いです。
契約書に署名した時点で、A社とB社との間の売買契約は成立しているので、A社が購入義務を負っているわけではありません。
契約書に署名した時点でA社はすでに購入しているのです。
ですので、この場合、
Company A hereby purchases the Products from Company B.と現在形を用いて表現すべきです。
もちろん、A社は製品の代金を支払う義務を負っており、B社は製品を引き渡す義務を負っていますので、これらの義務を表す場合には、shall pay やshall deliver などshallを使って表現します。
同じように特許権のライセンス契約では”Company A hereby grants Company B a license to use~” と表現します。shall grant とは言いません。こちらの方が意識されている方は多いかと思います。
shallを不必要に使っている例は、ほかにも色々ありますが、それはまた、別の機会に書きたいと思います。
では、では、お疲れ様でした。