英文契約のバックデートについて

取引相手と契約条件について合意ができたので、両者署名をする段階になったとき、署名の前にビジネス部門がすでに取引の一部を開始していたり、秘密情報を開示していることが判明した場合、皆さんはどのように対応されていますか?

下記のように契約書の冒頭に記載されている契約締結日を、実際の署名日よりも前の取引開始日や秘密情報の開示前にすればよいのではないか、と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。

THIS AGREEMENT is made on 1 February 2023 by and between XXXXXX, a corporation organized and existing under the laws of Japan, having its principal office at        (the “Company X”) and YYYYY, a corporation organized and existing under the laws of state of California, having its principal office at     ( “Company Y”)

このように契約書の冒頭の日付を変更することは簡単ですので、ついついそのような簡便な処理をしたくなる気持ちは非常に良く分かりますが、そのような方法によるバックデートは、おすすめしません。

契約書というのは、原則として、両当事者の署名がなされたときに効力が発生します。従って、契約締結日は、原則として、両者が署名する日と同じ日にする必要があります(多少ズレたりすることはありますが)。

契約書に記載された契約締結日と実際の署名日がずれた場合、契約書の効力の発生日が、実際に両当事者が署名した日なのか、それとも、契約書に記載された契約締結日なのか、争いになる可能性があります。

例えば、契約書には、1 February 2023が契約締結日だと記載されているが、両当事者の署名が揃ったのは、2023年の5月20日だという場合、取引相手から「2023年2月から5月19日までの行為については、契約書の効力が及ばない。だから、2023年2月の打合せで御社が開示された情報は、NDAによって保護されない。」などと主張されてしまうかもしれません(なお、契約書のバックデートは、このようなリスクに加え、税務上の問題もはらみます)。

このような主張を避けるためには、契約締結日としては、実際に署名した日を記載しておき、契約の効力が契約前の行為にも及ぶことを、契約書の冒頭ではなく、本文で明記しておくと良いでしょう。

その書き方は色々ありますが、例えば、NDAの場合、秘密情報の定義規程において、契約書の締結日(2023年5月20日)にかかわらず、2023年2月1日以降に開示された情報は秘密情報に含まれると定めておけばよいでしょう。

では、では、お疲れ様でした!

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